【日语共读】《解忧杂货店》(189)

【日语共读】《解忧杂货店》(189)

2018-06-01    06'18''

主播: 日语主播

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介绍:
誰がそんなことをいいだしたのか、はっきりと覚えていない。自分だったかもしれない、と敦也は思う。確信はない。ただ、拳を固めてこういったことは覚えている。「やろうぜ。そんな女から金を盗んだって、マリア様は許してくれるって」 翔太と幸平は拳(こぶし)を振り上げていた。やる気満々だった。 敦也记不清当初到底是谁先提议的,搞不好是自己,但他没有把握,只记得自己握紧拳头说:「那就下手吧。即使去偷那个女人的钱,圣母玛丽亚也会原谅我们的。」 翔太和幸平也举起拳头,充满了干劲。 同い年(おないどし)で、中学校も高校も一緒にだった。三人で、散々悪いことをした。置き引き、万引き(まんびき)、自販機荒らし(あらし)。暴力を使わない窃盗(せっとう)行為は大抵やった。今でも驚異的(きょうい)だと思うのは、殆ど捕まらなかったことだ。同じ場所でやらない、似たような手口を使わない—それなりにセオリーを守り、タブーを犯さ(おかす)なかったのがよかったのだろう。 他们三个人年纪相同,读同一所中学和高中,一起做过不少坏事。顺手牵羊、偷窃、偷自动贩卖机的钱,只要是不使用暴力的偷窃行为,他们全都干过。令人惊讶的是,他们从来没被抓到过。不在相同的地方犯案、不使用相同的手法──也许是他们遵守了这个原则,没有犯下偷窃的禁忌,才能一路侥幸到今天。 空き巣狙いも一度だけやった。高校三年の時だ。就職を控え、どうしても新しい服が欲しかった。狙ったのは、学校で一番の金持ちだった男子の家だ。家族旅行に行く日を突き止め、防犯設備などを細かくチェックしてから実行した。失敗したらどうしようとか、まるで考えなかった。盗み出したのは現金三万円ほどだ。たまたま開けた引き出しに入っていた。それだけで満足して逃げた。傑作(けっさく)なことに、家の者たちは被害に気づかなかった。楽しいゲームだった。 他们也曾经闯过一次空门。那是在高中三年级的时候。当时,他们正在找工作,想要买新衣服。于是,就锁定全校最有钱的男同学家,当那个男生全家出门旅行时,他们仔细确认了防盗设备后采取了行动,完全没有想到万一失败时的后果。他们在翻抽屉时,发现里面有三万圆现金,于是拿了钱就心满意足地逃走了。更绝的是,那家人完全没有发现家中遭窃。对他们来说,那次的闯空门,简直就是快乐的游戏。 ただし高校を卒業してからは、そんなことはしていない。三人とも成人(せいじん)している。捕まったら(つかまる)新聞に名前が出る。 だが今回、やめようといいだす者はいなかった。全員が切羽(きりは)詰まっていて、苛立ち(いらだち)を何かにぶつけたかったのだろう。本音をいえば、敦也は「丸光園」(まるみつえん)がどうなろうとかまわなかった。前の館長には世話になったが、苅谷(かりや)のことは好きじゃない。あいつが仕切る(しきる)ようになってから、施設内の雰囲気が悪くなった。 高中毕业后,他们就没再干过这种事。因为三个人都成年了,一旦遭到逮捕,报纸上就会刊登他们的名字。 但是,这次没有人提出要放弃计划。因为三个人都走投无路,想要找目标发泄一下内心的怨气。说句心里话,敦也根本不在意丸光园会怎么样,虽然之前的院长很照顾他,但他不喜欢苅谷,自从他接手后,孤儿院内的气氛越来越差了。 ターゲットに関する情報収集は翔太がやってくれた。後日(ごじつ)三人で集まった時、「グッドニュースがある」と翔太は目を輝かせた。 「女社長の別宅(べったく)を摑んだ(つかんだ)ぜ。『丸光園』に来るって話を聞いたから、スクーターを用意して待機(たいき)してたんだ。尾行(びこう)して、場所を突き止めた。『丸光園』から二十分ほどだ。小奇麗な家だけど、あれなら楽勝(らくしょう)だ。簡単に忍び込める。近所の人間の話だと、女社長は月に一度使うか使わないかってところらしい。おっと、その近所の人間に顔を覚えられるようなヘマはしてないから心配しないでくれ」 翔太负责搜集目标的相关信息,几天之后,当三个人再度聚在一起时,翔太双眼发亮地说:「有一个好消息,我查到了那个女老板的第二个家。因为听说她要去丸光园,所以我准备了一辆小绵羊跟踪她,查到了地址。她的第二个家距离丸光园大约二十分钟,房子很漂亮,闯空门绝对不是问题。听附近邻居说,女老板一个月也难得去一次。对了,你们不必担心,我不可能让那个邻居记住我的长相的。」 翔太の話が事実なら朗報(ろうほう)だが、問題は金目(きんめ)のものがあるかどうかだった。 「あるに決まってるよ」翔太は断言した。「その女社長、上から下までブランド品だぞ。別宅にだって宝石(ほうせき)とか置いてるに決まってるし、高価な壺(つぼ)とか絵が飾ってあるはずだ」 だよなあ、と敦也や幸平は同意した。正直というと、金持ちがどんなものを家に置いているのか、全くイメージできなかった。頭の中にある絵は、アニメやドラマで見たリアリティのない金持ちの邸宅(ていたく)だった。 決行(けっこう)日は九月十二日の夜とした。特に理由はない。翔太のバイトが休みだというのが最大の理由だが、休みの日はほかにいくらでもあった。だから、ただ何となくだ。 如果翔太的话属实,的确是好消息,但问题在于那里有没有值钱的东西。 「当然有啊,」翔太斩钉截铁地说,「那个女老板全身上下都是名牌,她的第二个家也一定会有很多珠宝,而且还会有昂贵的花瓶、字画之类的装饰品。」 「有道理。」敦也和幸平表示同意。老实说,他们完全无法想象有钱人家里都放甚么,他们脑海中只有在卡通或是连续剧中看到的、那些没有真实感的有钱人家中的景象。 他们决定在九月十二日晚上行动,并没有特别的理由。最大的原因是因为翔太那天刚好休假,但其实他并不是只有那一天休假,所以说,决定在这天行动并没有特别的理由。 移動用の車は幸平が調達(ちょうたつ)してきた。整備工だった頃の腕前を生かしたわけだが、古い車種しか扱えないのが彼の泣き所だった。 そして十二日の夜十一時を過ぎた頃、三人は侵入を図った。庭側のガラス戸を割り、クレセント錠を外す(はずす)という、極めてクラシカルな方法で簡単に入れた。ガラスにガムテープを貼ったので、破片(はへん)が音をたてて飛び散ることもなかった。 思惑通り、邸内は無人だった。物色のやり放題だ。手当たり次第にかっぱらおうぜと気合(きあい)を入れた。だがそこまでだ。気合は空き振りに終わった。 幸平负责张罗车子。他发挥了之前当汽车修理工的专长,可惜他只接触过老旧车种。 十二日晚上十一点多,三个人打破了面向庭院的落地窗,打开了窗锁,用很传统的方式轻轻松松地闯进了屋。他们事先在玻璃上贴了封箱胶带,所以,并没有发出声音,玻璃碎片也没有四溅。 屋内果然没有人。他们打算尽情地物色值钱的东西,尽情地偷,但是,这份期待很快就落空了。 家の中をくまなく探したが、ろくなものがないのだ。全身をブランド品で固めているはずの女社長の別宅が、なぜこんなに庶民的なのか。おかしいなあ、と翔太は首を捻るが、ないものはない。 その時だった。家のすぐ近くで車が停まる音が聞こえた。三人は持っていた懐中電灯を消した。すると次は、玄関の鍵が外された。敦也は股間が縮み上がった。何と、女社長がやってきたらしい。話が違うじゃないかと焦ったが、文句をいっても遅い。 玄関と廊下の明かりが点いた。足音が近づいてくる。敦也は腹をくくった。 虽然他们找遍整栋房子,却没有发现任何值钱的东西。为甚么全身名牌的女老板的第二个家这么普通?太奇怪了,翔太感到不解,但没有就是没有。 就在这时,听到有车子停在附近的声音。三个人立刻关掉手上的手电筒,随即听到钥匙开门的声音。敦也可以感受到自己的宝贝缩了起来。那个女老板居然回来了。不是说她不常来吗?但他即使想抱怨也来不及了。 玄关和走廊的灯亮了,脚步声越来越近。敦也下定了决心。