【周年庆】03朗读|尻尾の釣り——初声日语・流星
ある冬の日のことです。
狐が雪道を歩いていると前から川獺がやってきました。
「やあ、川獺君、ちょうどよかった。あたしこれから君のところに行くつもりだったんだ」
「そうなんだ、狐さん、僕に何か用かい?」
「いや、用事ってほどのことじゃないんだが、ほら、今は冬だろう、だから、食糧を探すのも大変だし、仲間同士で助けあったらいいかなって思って。」
「それはいい考えだね。じゃ、今日、うちにおいでよ。」
そういうと、川獺は冷たい川に潜り、サケやマスを捕まえました。
それから、狐を家に呼び、たくさんのご馳走で持て成したのです。
「わあ、うまかった、ありがとう。じゃ、あすの晩はうちにおいでよ。」
そういわれた川獺は翌日、狐の家に向かいました。
しかし、家の前まできても、ちっともご馳走の匂いがしません。
それどころか、物音もしないのです。
不思議に思って、川獺は家に入ってみると、狐は柱に捕まったまま、天井をじっと見つめていました。
「狐さん、狐さん、一体どうしちゃったの?」
「やあ、川獺君、せっかく来てくれたところ、申し訳ないんだが、神様の言いつけで、今日はこうやって、上ばかり見ていなければならないんだ。悪いんだけど、今夜のところは帰ってくれないか」
「そうだったんだ、それじゃ仕方ないな。じゃ、また明日ね。」
そして、次の日、今日こそは、と、川獺は狐の家に出かけて行きました。
ところが、前の晩と同じで、ご馳走の気配がありません。
家に入ってみると、狐は囲炉裏に掴まって、下ばかり睨んでいます。
「狐さん、狐さん、今度はどうしたの?」
そうしたら、狐は顔も上げないで
「ああ、それがな、運の悪いことに、今夜も神様の言いつけで、地面を見ていなければならなくなったんだ。悪いんだけど、また出直してくれないかな」
これを聞いた川獺は「狐はご馳走を用意する気がないんだ」と気づきました。
ところが、次の日の晩、狐がひょっこり川獺の家にやって来て
「やあ、川獺君、すまないが、今夜も食事の支度ができなかったんだ、だから、これから、魚を捕りに行こうと思って、魚の捕り方、君、うまかっただろう、だから、参考までに、君のやり方を聞いておこうかと思って」
「狐さん、そんなの簡単だよ。うんと冷え込む晩に、川の淵へ行って、尻尾を水に垂らしておくんだ。すると、ちょろちょろと魚が寄ってきて、尻尾に嚙みつくんだよ。いっぱい食いついたところで、そうっと尻尾を上げて、持って帰ればいいのさ。」
「お、おぉ、なんだ、その程度のことか。まあ、あたしはとっくに知っていたけどな、でも、ちょっとくらいは参考になったよ」と言って、狐は帰って行きました。
「ウフフ、これはいいことを聞いたぞ。それにしても、秘伝をこうも簡単に人に教えたりするとは、馬鹿のやつめ。よし、たくさん釣ってやるぞ。」
それからすぐ、川に行った狐は、水の中に尻尾を垂らして蹲り、遠くの山を眺めていました。
しばらくすると、薄い氷がサラサラ流れてきて、ピターっと尻尾にくっつきました。
「おぉ、魚が集まってきたぞ、このあたしの手にかかるは、こんなの楽勝だ。」
それからも、どんどん氷が流れてきて、尻尾について行きます。
狐は魚が尻尾を引っ張っていると思うと嬉しくなって、思わず歌いだしました。
そして、夜が更けてくると、尻尾は次第に重たくなって行きます。
狐は寒いけれど、「もうちょっと、もうちょっと」と欲を出して、じっと我慢していました。
そして、夜が明けるころ、川が氷が張って、真っ白になっていました。
当然、狐の尻尾も氷ついていたのですが、そうとは知らない狐は「たくさん釣れたところだろうな、そろそろ帰ろうかな、早起きの犬や人間にみつかったら、大変だし」
そこで、えいっと、尻尾を引っ張ってみました。
しかし、「うんん、はぁ、あれ?尻尾、尻尾が持ち上がらない。重い。はあ、は、取れないよ!うん、は、きっと、川獺君を騙した罰が当たったんだ、えーん、ごめんなさい。」
そのうちに、早起きの農夫が水を汲みに川へやってきて、狐を見つけました。
驚いた狐は尻尾を切って、一目散に逃げたのです。
お終い。