今日はね、ニノに私が通ってる学校を紹介してあげるよ。毎日毎日通ってる学校、ぶっちゃけ何の意味があって行ってるのかわかんないし、私はここがどうしても好きになれないんだけど、行かないと親が心配して迷惑かけちゃうし、みんなと同じことをしないと、周りが変人扱いするから、休まないようにしてるの。
えらいでしょう。
思い切って打ち明けるけど、私には友達がいないの。今まで、一度もできたことがないの。でも全然悲しくないよ、だってニノがいるから。ニノがいれば、私はそれだけで生きていける。ニノがいれば、なんにも怖くないの。
じゃあ、ニノにとって私はなんなんだろう、なんてことは考えないよ。そんなこと深く考えても、悲しくなっちゃうだけだもん。他人のノリに合わせて喋ったり、笑ったり、遊びに行ったりすることって、とってもとってもきついことだと思う。そういう終わりがある中で、したくないことのために自分を費やすって、ちょっとかわいそう。だってだってさ、そもそもの話になっちゃうけど、他人の気持ちなんてわかんないから、どうしだって分かりっこないじゃない。自分が心の底からなにを考えてるかすら怪しのに。それなのに、他人の気持ちを考えて、周りの空気を読んで、この世界を進んでいかなきゃいけない私たちは存在自体が、あやふやなのかもしれないね。何が言いたいかというと、私は一人でも大丈夫ということ。そう信じているということ。
ニノは花って好き?私は嫌い。花は儚さを売りにしているずるい美しさだから。儚いことなんていっぱいある。私だって儚いし。本当はニノだって儚い。あした惑星が落ちてこないとは言えない地球だって実は儚くて、そんな何がいつどうなるかわからない世界にいて、自分だけが終わりがあるみたいなツラして花びらを揺らす花は、どう考えてもずるいと思う。
私だって本当は叫びたい。
ここにいるよって大きな声で叫びたい。ほっといたら消えて無くなっちゃう とってもとっても弱い生き物なんだよって叫びたい。
でもね、私はそんなこと言わないの。それじゃあ花と一緒だから。みんな弱いいきものだもん。それなのに、そんなこと言うのは、ルール違反だもん。
中学の頃から私はずっと暗かった。けどね、幼稚園生の頃、私はこうじゃなかったの。友だちもいったし、私すっごく明るかった。運動も得意でね、かけっこではいつも一位だったんだよ。人間って変わるんだよね、きっかけなんて思い出せないくらい小さいもので、人ってガラリと世界が変わる。もう走り方もわからなくなっちゃった。腕をどう振るか、太ももの動かし方さえ忘れた。後悔してるわけじゃないよ。あの頃に戻りたいわけでもない。戻ったってしょうがないからね。別に、明るくて運動ができて友達が多いことが正しいわけじゃないでしょう。それに、こんな性格になってなかったら、きっと私、ニノと出会ってなかった。ニノのおかげで、私は、私を好きになれた。ニノのやさしい歌声を聞いていたら、自然に涙が溢れてね、止まらなくなった。でも、でも全然恥ずかしくなかったよ。泣くのは恥ずべきことじゃない。むしろ泣けないことこそ恥ずかしいと思う。これ、ニノがライブで言ってた言葉だよ。忘れちゃった?いいの、ニノが忘れても私が覚えてるから。
教室には教室の匂いがあって、でもその匂いは人の匂いなんだね。私にはどんな匂いがあるだろう。いい匂いでも、嫌な匂いでも、匂いがないよりはいいと思う、匂いがないってことは存在しないってことだから。生きるということは匂いがあるということ。死んじゃったら灰になって、匂いもなく、風に流れて飛んでいくだけ。それは悔しい!!!ニノはどんなにおいがするのかな?
ね、みんな聞いてる?
聞こえてる?
私の声は届いてないの?
そうだ、屋上に行こうか。
行くよ。
よい。
ドン。
ちゃんとついてきて。
もう空は明るいね、気持ちいいね。(あと少しだけでいいから)
ニノ、私ね、たまに本気で思うんだ。(ああ、君のそばにいたいね)
きっと私には見えない羽根があって、どこにだって行ける、どこまででも飛べる(些細なことも知りたいから)
楽しむ準備はできてる、なんだってできる。(君のそばにいさせて)
へへへ、変かな、期待かな。私みたいな根暗キャラが何考えちゃってんのって、笑われちゃうかな。
でもね、本当なの、強がりなんかじゃないよ。友達なんかいなくても、この二つの足があれば、立っていられる。(もう少し笑えるのなら、君の元で笑いたいね)
勉強なんかできなくても、ニノの経歴は全部、見えるんだよ。(いつでも安心したいから)
あ、これがバスケ部が練習している音だよ。(君のそばにいさせて)
バスケットボールが床に当たって跳ねる音。(私の私は)
っていうことは、もうすぐ学校はじまっちゃうね。(君の瞳に映っていない)
人の声がうるさくなってきたね。(それでもいいんだ)
なんで人って喋るんだろうね。
うん、わかってる。
もう時間だね。(サヨウナラすら言えなかった)
(君に閉じ込められたいんだ)
(なんだってできる)
(青春が終わっても)
(楽しかったんだ)
楽しかったよね。
(あと少しだけでいいから)
(ああ君のそばにいたいね)
ねぇ、ニノ、私今日も頑張るから。
いつか、私のことを見つけてね。
(些細なことも知りたいから)
(君のそばにいさせて)