咲様、
どこの誰とさばかりはわかりませぬが、
南方先生はお命をねらわれておりんす。
けんど、あちきんは吉原(よしわら)から一歩も出ること 許されぬ 籠の鳥。
あなた様におすわりするしかありんせん。
咲様はあちきんを羨ましいとおっしゃったけんど、
あちきんは咲様が羨ましい。
野の花のような風情も、
汚(けが)れもしなぬ まっすぐなお心も、
そして何よりそのみのうえが。
例えば、咲様は好いたお方のおそばに 己(おのれ)の足で向かうことができるのでありんしょう。
あちきんにはかなわぬ夢でおざんす。
咲様、どうか先生をおまもりくださいなんしん。
野風
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橘小姐,
虽然不知道是哪里的谁,
但是确实有人要置南方大夫于死地。
可是,我是一只不能踏出吉原一步的笼中之鸟。只能够拜托你了。
你虽然说过羡慕我,但我更羡慕你。
不论你如花般地风情也好,不沾染丝毫丑恶的 纯洁的心灵也好,当然 最羡慕的是你的命运。
比方说,你能凭借自己的双脚走到爱人身边去。
对我来说 这只是实现不了的梦。
橘小姐,请一定要保护好大夫。
野风