半沢直樹13
半沢:湯浅社長。
湯浅:先ほど、日本に戻ってきたばかりでね。あなたには一刻も早くお会いしなければと思い、連絡を入れたら、こちらに来ているとのことでしたので。
半沢:初めまして、東京中央銀行の…
湯浅:半沢直樹。中野渡頭取にお願いしてあなたを指名したのは私です。昔一度あなたにお会いしたことがある。覚えてますか?あの大東京ホテルの再建支援策協議の場を。
半沢:何を縮こまってるんですか!経営方針を刷新していただく、覚悟があるのなら、産業中央銀行は全力で支援させていただきます!
あの時の…
湯浅:学校を卒業して、あのホテルで修業していた時期でした。
半沢:そうでしたが。
湯浅:どうぞ。主力銀行をはじめ、ほどんとの銀行が手を引く中で、あなただけが、積極的に支援の可能性を見い出し、再建のために我々の経営企画会議まで顔を出し、奔走してくれた。今まで、様々な銀行員を見てきましたが、後にも先にもそんな人は初めてでした。いったいなぜあそこまで?
半沢:助かる可能性のある患者を見殺しにする医者はいません。それと同じです。私は大東京ホテルを救えると信じた。だから支援した。それだけのことです。
湯浅:あなたのその曇りのない正確な目に、今の伊勢島ホテルはどう映りますか?
半沢:瀕死の重傷を負った巨象です。ですが、死んではいない。まだ、救う方法はあるはずです。
湯浅:私なりに新しい再建プランを練ってみた。これまでの国内欧米中心の客層から、アジアをメインに顧客を獲得していこうと思う。すでに上海とシンガポールの大手旅行代理店とは契約してきた。
半沢:それで海外に?
湯浅:ナルセンに最新のITシステムの開発も依頼してある。
半沢:ナルセンというと、あのITベンチャーの?
湯浅:年内には海外から直接予約できる独自のシステムが完成する。さらに、月に一度外部から有識者を招き、刷新会議も開く予定だ。
半沢:それはつまり、御社を縛り続けた悪しき伝統からの脱却。ワンマン経営者であるお父様との決別。そう考えてよろしいですね? その覚悟がおありなら、御社は立て直すことができるでしょう。
湯浅:ありがとうございます。