半沢直樹15
半沢:私に聞きたいこととは何でしょうか?
大和田常務:君が京橋支店で何かの不正を調べているという噂を聞いたんだが、事実かな?
半沢:はい、事実です。
大和田常務:穏やかじゃないねえ。金融庁検査を目前に、不正などという噂を常務としては聞き流すわけにもいかなくてねえ。ちょっと詳しく話してくれないか?
岸川:どうした、半沢。知っていることはすべて報告したまえ。
半沢:分かりました。実は、伊勢島ホテルで120億の損失が出たことを銀行に内部告発した人物がいました。しかし、京橋支店の貝瀬支店長と古里課長代理はその内部告発を握りつぶし、損失が出ることを知っていながら、伊勢島に200億の融資が実行されるよう仕向けました。
岸川:貝瀬君と古里君が?何か証拠はあるのか?
半沢:ございます。
岸川:どんな証拠だ?見せたまえ。
半沢:今は、お見せすることはできません。
岸川:なぜだ?
半沢:最重要疎開資料として私が保管しております。それに、この不正の裏には、貝瀬支店長に指示を出した別の人物がいる疑いがある。それが誰なのかはっきりするまでは、安易な報告は差し控えたほうがよろしいかと。
大和田常務:なるほどね。けれどもねえ、貝瀬支店長に指示を出せるような人物となると…まずは前京橋支店長だった岸川部長。まさか、君なのかね。
岸川:ご冗談を。
大和田常務:違う。でないとすると、君の前に京橋支店長を務めていた私。その前が、帝国重工に行った伊藤さん。その前が。
半沢:残念ながら、常務以前の支店長の方々は皆、現役を退いていらっしゃいます。歴代支店長で現役なのはお二人だけだ。
大和田常務:あら、まいりましたねえ。このままじゃ、容疑者にされてしまうよ。
岸川:さすが半沢君、冗談も一流だね。
半沢:冗談で申し上げてるつもりはございません。伊勢島の担当としては、お二人を疑うのは当然だと思いますが。いずれにしても、今回の伊勢島問題諸悪の根源は京橋支店にある。私はそう見ております。