半沢直樹20
半沢:最後に一つお聞きします。福山次長、あなた羽根専務にお会いしたことがありますか?どうしました?あなたが次期社長にふさわしいと推す羽根専務ですよ。
福山:それは…
半沢:当然、お会いしたことがあるんですよね。会ったことがあるのか、ないのか、どっちなんだ。
福山:残念だが、お会いしたことはない。
半沢:会ったことがない?あなた一度もあったことの人間を社長にしようとしてるんですか。一度もあってないのに、どうして社長にふさわしいと言えるんです?
福山:それは、私は羽根さんのお考えや人柄については岸川部長から伺っていて、間違いないと思っている。本人に直接会ったことがないからと言って、羽根専務を社長に推すことに問題はないだろう。
半沢:それを本気でおっしゃっているなら、あんたこそ大馬鹿だ!さっき、自分で言ったでしょう。「企業は人だ」と。その肝心の人にも合わず、他人の言葉をうのみにして、先入観だけで、羽根専務をトップにするのは、完全な自己矛盾なんじゃないですか。伊勢島ホテルで120億の損失を出した張本人は、羽根専務なんですよ。
福山:それは湯浅社長が指示してやらせたこと…
半沢:いいや、彼女がそう根回しをしているだけです。ごく一部の人間しか知らないことだが、あれは羽根専務が独断で出した損失だ。あるいは、銀行の上層部なら知っていてもおかしくない情報かもしれませんが、伝えなかったんですか?
福山:ご…ご存じだったんですか。
岸川:知らんよ。半沢次長のたわごとだろう。
半沢:私の言っていることがたわごとかどうか、それは一度でも伊勢島ホテルに足を運び、湯浅社長に話を聞けばすぐに分かったはずです。しかし、福山さん、あなたは羽根専務ばかりか、湯浅社長にさえ会っていない。そんな人間の立てた再建計画に説得力なんかありませんよ。なぜなら、そこには血が全く通っていないからだ。あなたが見ているのはいつも数字やデータばかりだ。目の前にいる生身の人間を見ようともしない。そんな人間に伊勢島ホテルは任せられない。反論があるなら、聞かせてもらおう。