「寒(さむ)いなぁ~今宵(こよい)冷(ひ)えるだろうなぁ~それにしても、暇(ひま)だ。図書館(としょかん)で万葉集の資料(しりょう)でも探(さが)すか。」
僕は遊(あそ)びに行くまでの時間(じかん)を潰(つぶ)すために、校内(こうない)をふらふらとしていた。
「図書館来るのは久しぶりだなぁ~あれ?あの横顔(よこがお)は…」
「姫(ひめ)、お迎(むか)えにあがりました。って、冗談(じょうだん)だよ。いつも講義(こうぎ)が終(お)わると、すぐどっかに行っちゃうと思ったら、ここにいたんだね。あっ、ごめん~読書(どくしょ)の邪魔(じゃま)しちゃった?少し隣(となり)に座(すわ)っていい?大丈夫、静(しず)かにしているから。」
「ん?僕?時間潰しに来たんだよ。じゃなきゃ、僕がこんなとこに来るわけないじゃん。外(そと)寒くて、避難(ひなん)ついでに~それに、遊びにいく約束(やくそく)もあるし。本を読(よ)んでる君の姿(すがた)が見えたから、思わず声(こえ)かけちゃった。夢中(むちゅう)で読書してる姿、綺麗(きれい)だなぁって。嘘(うそ)じゃないよ。君の横顔、とっても綺麗!」
「窓際(まどぎわ)のこの席(せき)いいねぇ~外の景色(けしき)がよく見える。あ~何だか眠(ねむ)くなってきた。ん?寝(ね)てでもいいよって?じゃあ、すこしだけ。ねぇ、手、握(にぎ)ってでもいい?片手(かたて)があれば、本読めるでしょ?フフ~君の手、暖(あたた)かい。緊張(きんちょう)してるの?でも大丈夫~何もしないから。おやすみ~」
外はまだ北風(きたかぜ)が吹(ふ)いている。でも、手から伝(つた)わる彼女の体温(たいおん)は心地(ここち)よかった。
僕は彼女に恋をしてしまった。夢(ゆめ)の中でいいから、彼女に会(あ)いたい。でも、彼女を思うと眠れない。
僕が眠りから覚(さ)めても、彼女は変(か)わらず隣で読書をしていた。手はずっと握ったまま…