台词:田辺千鶴
朗诵:あさぎ21号
正文:
むかし むかし
あるところに
ひどく寂しがりやの王女様がいらっしゃいました
どんなに優しい言葉をもらっても
どんなに盛大なパーティを開催しても
話題の道化師も
きらびやかな衣装も
王女様から寂しさを取り除く事はできません
「どうして私はこんなにも寂しいのでしょう。」
王女様の足下には
毎日 毎日
粉雪のように
ため息が降り積もるのでした
そんなある日
城を訪れた1人の旅人が言いました
「王女様、あなたがお寂しいのは、
人に与えることをなさらないからです。
あなたは人から与えられるばかり。
笑顔のひとつも返す事がおできにならない。
それは、とてもさみしいことです。」
「では、どうすれば良いのでしょうか。」
「自分でお考えにならねばなりません。
自分の目で見て、考え、判断する。
それは、とても大切なことです。」
そう言って、旅人は城を出て行きました
しばらく考えてから
王女様は席を立ち
それから 走り出しました
高価な靴を脱ぎ捨て
スカートの裾をつまみ
生まれて初めて力一杯走りました
「待って、旅人さん」
驚いて振り返った旅人に
王女様は言いました
「私も行きます。世界を見に。」
その目にはもう、寂しさの色はありませんでした。
そんな
全てがはじまる前の
全ての始まりのお話