【夜读书】在夜晚为你读一本好书,一篇好文,让你闭上眼睛随着我们的声音带到那书中的世界。 今天我们【夜读书】要为大家读的是选自人气声优兼歌手兼人妻的坂本真绫老师的一本欧洲随行笔记【From Everywhere】,朗读者:初声教学部 Lemon。 ***************************************************************
【夜读书】From Everywhere-9 NJ: lemon, 文:坂本真绫
それは我ながらすごく意外なことだった。だって普段なら、自分のペースを乱されることをとても嫌うのに。たとえ5分でも無意味な時間を過ごすことが許せなくて、だからいつもじっとしていられない。2つ以上のことを同時に進めていて当たり前。そんなせっかちな私が今は、来るかどうかもはっきり分からない人を、ただ待っている。それ以外にすることが何もない。だけど不思議と無意味だとは思えない。いや、とっても無意味だなあーと思っているのかもしれない。どちらにせよ、良い気分だ。
「ごめんなさーい!!」
メグミさんが来たのは7時半を過ぎてからだった。
「キッチン用品とかを夢中で見て歩いてたらいつのまにかすごく遠くまで行ってしまってたみたいで、電話もなぜか繋がらなくて……!」
申し訳なさそうに息を切らせて説明する彼女を、とっても愛らしいなと思った。
「ぜーんぜん。なんかボーッとしてたら気持ちよかったー」
待っていた時間は、今こうして彼女が来てくれたことより、一層素敵なものになった。
「こっちのお菓子作りの道具ってすごくカワイイのがいっぱいあるんですよ。日本で買えるものもあるけど、こっちで買ったほうが断然安いんですよね」
両手にたくさん袋を抱えてる。そっか、明後日の朝にはもう日本へ帰るんだもんね。まだ始まったばかりで先が長い私とは時間の捉え方が違う。私なんか今日、ほとんどぶらぶらしてただけで何もしていないもの。
カフェのテラス席で夕食を食べた。彼女は26歳。歳よりも大人っぽく見えたのははきっと日々自分の腕を磨くことに向き合てきた、職人さんというお仕事のせいだろう。
「真綾さんは、会社とか、そんなに長くお休み取れたんですか?」
「そうですね、まあなんというか自由業なので、ある程度は融通がきくというか……」
「この後、どこへ行くんですか?」
「次は明後日の朝チェッコへ行くことだけは決まってて。そこから先はノリで。最後はポルトガルまで。」
「ポルトガル!って、どこ?」
「あはは、そうだよね。私もこの前まで知らなかった」
この先、こうして誰かとテーブルを共にすることが、あと何回くらいあるのだろう。夜の9時過ぎ、外がようやく暗くなり始めたのを見て席を立った。ヨーロッパは今、日がとても長い。
「気をつけて旅を続けてくださいね」
「帰国したらお店にケーキ買いに行くね」
ルーブル美術館の前の広場で一緒に写真を撮って、お互い反対方面行きのメトロに乗るため向かいのホームで手を振り合い別れた。うん、良い夜だった。メグミさんがいてくれたおかげで、長い長い一人きりの旅がゆるやかに、そーっと始まって、寂(さみ)しさを感じずにすんだ。彼女のこれから始まる新生活が素敵なものでありますように。と、心から思った。夜のメトロは人が少なくてちょっぴり表情が違う。しっかり気を抜かないでホテルまで帰らなくちゃと思っていたら、どうも見覚えのない駅名が続く。慌てて路線図を確認すると、どうやら逆方面に間違えて乗っているらしい!うわー、てことはメグミさんも!?悪いことしてしまったなあ……昨日からたった2日間の間に、私ったらいったい何回道や路線を間違えているかわからない。こんなに注意深くしているつもりなのに、ほんと方向音痴なんだよなあ。先が思いやられる。
ホテルに戻ったのは夜の11時前。この旅のルールその2、暗くなってからはひとりで外を出歩かない。を、いきなり破った。反省。これが最初で最後。