【周年庆】08朗读|魔女と少年——初声日语・流星
これは森の医者◎の話。
魔女と呼ばれた医者と少年の話。
「先生は、僕の病気を治してくれたんだ」
少年は覆い隠された左目に触れて、無邪気に笑う。
「僕の左目はその対価(たいか)①◎なんだよ」
病気の原因◎は、左目の角膜(かくまく)◎に住み着いた何かだという。
それを取り除くために少年の左目はくり貫(つらぬ)かれた。
森の外の者は囁(ささや)く。
「あの森には魔女がいる」
魔女と呼ばれる医者の世話になって1週間(いっしゅうかん)③がたった。身体(しんたい)①のどこかが無くなることは起きていない。
しびれて動かなかった足も、だいぶ楽に動くようになった。
「ほら、先生はスゴいだろ」
少年は右目を細めて無邪気に笑う。
光の加減(かげん)◎で、黄金色(こがねいろ)◎にも見える碧(へき)①の瞳。
「僕は先生がいなけりゃ、今頃は骨になってたんだよ」
体力が戻って日中(にっちゅう)◎も起きて居られるようになると、少年は聞きもしないのに様々なことを話にきた。
「先生が助けてくれなかったら、僕は死んでた。ここに置いてもらえなきゃ、僕は路頭(ろとう)◎に迷ってた」
少年の話に口を挟むことはしない。
ずっとひたすらに聞いている。
「ねえ、森の外にでたらみんなに伝えて。先生はすごい人なんだって」
少年は無邪気な笑顔で言う。
しかし、それを伝えることはないだろう。
「先生は、どこにいる?」
久方(ひさかた)ぶり◎⑥に出した声は、掠(かす)れていた。
「先生は・・・・・・」
これは森の医者の話。
魔女と呼ばれた医者と少年の話。
いや、違う。
これは、魔女を追う男と、魔女と少年の話。
愛しい女を魔女に殺された男の話。