チビとのんちゃん
チビは雑種の子犬。
小っちゃいから、チビ。安易だけど、みんなに愛されている。
チビが遠藤家にやってきたのは、冬も終わりかけの、まだ寒い日だった。
「駄目、のんちゃん! 野良犬は噛むかもしれないから、触っちゃ駄目よ」
まだチビが公園で暮らしていた頃、のんちゃんはママに叱られても、チビに近付くのをやめなかった。
「犬ならパパにお願いしてみよう。近くにペットショップあるし、飼ってもらえるかもしれないよ?」
「やだ! この子がいい!」
「わがまま言わないの。駄目なものは駄目!」
無理やり抱きかかえられ、のんちゃんはチビから引き離された。
数日後、同じ公園に行っても、チビの姿はなかった。
のんちゃんは、チビに会えるのを楽しみにしていたので、残念で仕方がない。
「あ、チビ!」
だが帰りかけの公園、のんちゃんは近所の小学生にいじめられている、チビを発見した。
「やめろー!」
一目散に駆け出したのんちゃんは、倍以上大きい体の小学生に、体当たりをする。
「チビ、逃げて!」
そう言うのんちゃんに、チビは逃げようとしない。
今度はのんちゃんの周りで吠え始め、小学生を威嚇した。
「チビ……」
やがて、一瞬見失っていたママが、のんちゃんを助けに来た。
のんちゃんはチビを抱きしめ、ママを見つめる。
「絶対面倒みるから、チビを飼って。このままじゃチビ、また苛められちゃうよ! それにチビ、のんちゃんを守ってくれたよ」
のんちゃんの熱意に負け、ママは小さく頷いた。
その日から、遠藤家にはチビがいる。
のんちゃんとは、片時も離れない相棒。