スター誕生
顔はまあまあ、体系も普通。
得意なことといえば、声がデカイこと、態度がデカイこと、とりあえず慕ってくれる仲間が多く、カリスマ性はあることくらい――。
「はい、もう一度最初から! ファイブ、シックス、セブン、ハイ!」
なぜかダンスのレッスン中。
なんとなくスカウトされた事務所で、なんとなくのユニットを組まされた。
調子に乗って、知り合いに言いまくってしまったため、ここでユニットから降ろされるわけにはいかない。
「オイ、君!」
キタ! 俺は委縮して、ダンスの先生の前に立つ。
「ハイ!」
「君、全然駄目。ダンスやったことないにしても、もう少し覚えられるでしょ」
「ハイ! すみません!」
俺は持ち前の大きな声で、そう返事をする。いい返事くらいしか、今の俺に取り柄はない。
「あのね、君。返事ばかり良くても駄目なんだよ」
「ハイ!」
「だからね……」
「ハイ! 頑張ります!」
「ああ、そう……まあいいや。頑張って」
ダンスの先生が、諦めたように背を向ける。
今日のレッスン終了後、俺はもう一度、先生に呼ばれた。
「君はね、光るものはあるんだけど、どうもダンスは出来ないらしい。もう君は踊らなくてよろしい」
「え!」
ショックで他に言葉も出ない。
だが俺は、すぐに拍子抜けすることになる。
「君はソロでデビューしなさい。今一緒にやっている子たちは、バックダンサーで付けることに決めたから」
俺という、スター誕生の瞬間――。