日本の昔话12——節分の鬼

日本の昔话12——節分の鬼

2016-06-25    10'01''

主播: Jennykaede

113 6

介绍:
むかしむかし、ある山里に、ひとりぐらしのおじいさんがいました。  この山里では今年も豊作で、秋祭りでにぎわっていましたが、だれもおじいさんをさそってくれるものはおりません。  おじいさんは、祭りの踊りの輪にも入らず、遠くから見ているだけでした。  おじいさんのおかみさんは、病気で早くになくなって、ひとり息子も二年前に病気で死んでいました。  おじいさんは、毎日、おかみさんと息子の小さなお墓に、お参りする事だけが楽しみでした。 「かかや、息子や、早くお迎えに来てけろや。極楽(ごくらく→天国)さ、連れてってけろや」  そう言って、いつまでもいつまでも、お墓の前で手を合わせているのでした。  やがて、この山里にも冬が来て、おじいさんの小さな家は、すっぽりと深い雪に埋もれてしまいました。  冬の間じゅう、おじいさんはお墓参りにも出かけられず、じっと家の中に閉じこもっています。  正月が来ても、もちを買うお金もありません。  ただ、冬が過ぎるのを待っているだけでした。  ある晴れた日、さみしさにたえられなくなって、おじいさんは雪にうまりながら、おかみさんと息子に会いに出かけました。  お墓は、すっかり雪にうまっています。  おじいさんは、そのお墓の雪を手で払いのけると。 「さぶかったべえ。おらのこさえた甘酒だ。これ飲んであったまってけろ」  おじいさんは甘酒をそなえて、お墓の前で長いこと話しかけていました。  帰る頃には、もう、日もくれていました。  暗い夜道を歩くおじいさんの耳に、子どもたちの声が聞こえてきます。 「鬼は~、外! 福は~、内!」 「鬼は~、外! 福は~、内!」  おじいさんは、足を止めてあたりを見回しました。  どの家にも明かりがともって、楽しそうな声がします。 「ほう、今夜は節分(せつぶん)じゃったか」  おじいさんは、息子が元気だった頃の節分を思い出しました。  鬼の面をかぶったおじいさんに、息子が豆を投げつけます。  息子に投げつけられた豆の痛さも、今では楽しい思い出です。  おじいさんは家に帰ると、押し入れの中から、古いつづらを出しました。 「おお、あったぞ。むかし息子とまいた節分の豆じゃあ。ああ、それに、これは息子がわしにつくってくれた鬼の面じゃ」  思い出の面をつけたじいさんは、ある事を思いつきました。 「おっかあも、かわいい息子も、もういねえ。ましてや、福の神なんざにゃ、とっくに見はなされておる」  こう思ったおじいさんは、鬼の面をかぶって豆をまきはじめました。 「鬼は~内、福は~外。鬼は~内、福は~外」  おじいさんは、わざとアベコベにさけんで豆をまきました。 「鬼は~内、福は~外」  もう、まく豆がなくなって、ヘタヘタと座り込んでしまいました。  そのとき、おじいさんの家にだれかがやってきました。 「おばんでーす。おばんです」 「だれだ。おらの家になにか用だか?」  おじいさんは、戸を開けてビックリ。 「わあーーっ!」  そこにいたのは、赤鬼と青鬼でした。 「いやー、どこさ行っても、『鬼は~外、鬼は~外』って、嫌われてばかりでのう。それなのに、お前の家では、『鬼は~内』って、よんでくれたでな」  おじいさんは震えながら、やっとの事で言いました。 「す、すると、おめえさんたちは節分の鬼?」 「んだ、んだ。こんなうれしい事はねえ。まんずあたらしてけろ」 と、ズカズカと家に入りこんできました。 「ま、待ってろや。いま、たきぎを持ってくるだに」  この家に客が来たなんて、何年ぶりの事でしょう。  たとえ赤鬼と青鬼でも、おじいさんにはうれしい客人でした。  赤鬼と青鬼とおじいさんが、いろりにあたっていると、またまた人、いえ、鬼がたずねてきました。 「おばんでーす。おばんです」 「『鬼は~内』ってよばった家は、ここだかの?」 「おーっ、ここだ、ここだ」 「さむさむ。まずは、あたらしてもらうべえ」  ぞろぞろ、ぞろぞろ、それからも大勢の鬼たちが入ってきました。  なんと、節分の豆に追われた鬼が、みんな、おじいさんの家に集まってきたのです。 「なんにもないけんど、うんとあったまってけろや」 「うん、あったけえ、あったけえ」  おじいさんは、いろりにまきをドンドンくべました。  じゅうぶんにあったまった鬼たちは、おじいさんに言いました。 「何かお礼をしたいが、欲しい物はないか?」 「いやいや、なんもいらねえだ。あんたらに喜んでもらえただけで、おら、うれしいだあ」 「それじゃあ、おらたちの気がすまねえ。どうか、望みをいうてくれ」 「そうかい。じゃあ、あったかい、甘酒でもあれば、みんなで飲めるがのう」 「おお、引き受けたぞ」 「待ってろや」  鬼たちは、あっというまに出ていってしまいましたが、 「待たせたのう」  しばらくすると、甘酒やら、ごちそうやら、そのうえお金まで山ほどかかえて、鬼たちが帰ってきました。  たちまち、大宴会のはじまりです。 「ほれ、じいさん。いっペえ飲んでくれや」  おじいさんも、すっかりごきげんです。  こんな楽しい夜は、おかみさんや息子をなくして以来、はじめてです。  鬼たちとおじいさんは、いっしょになって、大声で歌いました。 ♪やんれ、ほんれ、今夜はほんに節分か。 ♪はずれもんにも福がある。 ♪やんれ、やんれさ。 ♪はずれもんにも春がくる。  大宴会はもりあがって、歌えや踊れやの大騒ぎ。  おじいさんも、鬼の面をつけて踊り出しました。 ♪やんれ、やれ、今夜は節分。 ♪鬼は~内。 ♪こいつは春から、鬼は内~っ。  鬼たちは、おじいさんのおかげで、楽しい節分を過ごすことが出来ました。  朝になると鬼たちは、また来年も来るからと、上機嫌で帰っていきました。  おじいさんは、鬼たちが置いていったお金で、おかみさんと息子のお墓を立派な物になおすと、手を合わせながら言いました。 「おら、もう少し長生きする事にしただ。来年の節分にも、鬼たちをよばねばならねえでなあ。鬼たちにそう約束しただでなあ」  おじいさんはそういうと、晴れ晴れした顔で、家に帰っていきました。 おしまい