日本の昔話18——頭の池

日本の昔話18——頭の池

2017-01-04    04'39''

主播: Jennykaede

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介绍:
日本の昔話18——頭の池 頭の池 むかしむかし、あるところに、どうにも貧乏な男がいました。 「人並みに暮らしたいなあ。・・・そうだ、観音様(かんのんさま)にお願いしてみよう」 男が村の観音様に通って、お参りを続けていると、ある晩、観音様が現れて、 「いいだろう。お前の願い、叶えてしんぜよう。夜が明けたらお宮の石段を降りていって、最初に見つけた物を拾い、それを大事にしなさい」と、告げました。 やがて男が石段を降りて行くと、何か落ちています。 「ははん。これだな」  拾いあげると、それはカキのタネでした。 「何だ、こんな物か」  男は捨てようかと思いましたが、せっかくお告げをもらったのですから粗末に出来ません。  ありがたくおしいただくと、これは不思議。 カキのタネが男のひたいにピタッと張り付いて、取ろうにも取れません。 「まあいい、このままにしておこう」  すると間もなく、カキのタネから芽が出て来ました。 芽はズンズン伸びて、立派な木になりました。  男がたまげていると、カキの木は枝いっぱいに花をつけ、花が終わると鈴なりに実をつけました。 「うまそうだな。試しに食べてみよう」  男が食べてみると、甘いのなんの。  男はさっそく、町へカキを売りに行きました。 「頭にカキの木とは、珍しい」 「おれにもくれ」 「おれもだ」  カキは、飛ぶ様に売れました。  男はお金をふところにホクホク顔でしたが、面白くないのは町のカキ売りたちです。 「おれたちの商売を、よくも邪魔したな!」  男を囲んで袋叩きにすると、頭のカキの木を切り倒してしまいました。 「ああ、もう、金もうけ出来ない・・・」 男がしょげていると、切り倒されたカキの木の根元に、カキタケという、珍しいキノコが生えてきました。 おいしいキノコなので男が売りに行くと、これまた飛ぶ様に売れました。  面白くないのは、町のキノコ売りたちです。 「おれたちの商売が、あがったりだ!」  男を囲んで袋叩きにすると、カキの木の根元を引っこ抜いてしまいました。 男は、ガッカリです。  頭には、大きなくぼみが出来てしまいました。  やがてこのくぼみに雨がたまって、大きな池が出来ました。 「こうなったらいっその事、池に身投げをして死んでしまいたい」  男がなげいていると、頭の池でパチャンとはねるものがありました。  手に取ってみると、大きなコイです。  頭の池にはいつしか、コイやらフナやらナマズやらが育っていたのです。 男は頭の池の魚を売りに行って、またまたお金をもうけましたが、町の魚売りたちはあきれて、ポカンとながめているだけでした。 おしまい。