《くすり》
花模様の髪止めが
きみの小さなぜいたく
給料の残りで
今度は何を買おうかなんてか考えている
働き疲れて 寝息をたてて
きみは夢の中で
まだ夢を見る力を残してあるだろうか
風邪気味のきみが
やっと薬を買った
《二人》
きみを背負って歩くには
ぼくたち ひどく軽過ぎる
夜が明ける頃になると
どうしてもっと
本気にならなかったのかと
空っぽになって
それでも酔(よ)えないコップを
見ている
ぼくたち
どうしても視線がずれてしまい
また一人一人になって
引き返して行く
君を背負って歩くには
ぼくたち ひどく軽過ぎる
《部屋》
机がひとつ 座っていた
きみは窓になって 黙っていた
もう こんな隠れん坊はやめようよ
きみの部屋
《お洒落》
お洒落して出掛けて来たのに
もう気に入らなくなってしまった
それできみは早速(さっそく)新しい服を買うと
今朝の服は捨ててしまった
また新しく一日が始まるみたいで
そばのぼくも 妙にソワソワしている(坐立不安)
《手紙》
傍で踊るきみ
ぼくは手紙を書いている
傍で踊るきみ
だれ宛てにしたって
結局は同じ事を書くに
決まっているさ
傍で踊るきみ
傍で踊るきみ
宛て名に(收信人姓名)
きみの名前を書いた
《世界》
一緒に暮らせるように
いつかなるかしら
きみの胸の中の声が聞こえた
駈けて行くよ
光を受けてすべてが真っ白に光っている
太陽が消してしまった世界へ
まぶし過ぎて何も見えない世界
真っ白に光る世界
光る世界
世界
世界