『ケーキも食べる?』
そうだね、ケーキも食べるよ。
『イクラも食べる?』
うん、イクラもあるよ。(佑司はイクラが好物なのだ)
それからーー
なんでもあるよ。心配しなくていいから。
ねえ、その星にジム・ボタンもいるの?
なんで?
だって、ぼくはジム・ボタンを知っている。それって、『心の中にいる』ってことでしょう?
うううん、いると思うよ、多分。
じゃあ、エマは?エマもいる?
エマはいない。
いるのは人間だけだよ。
ふ〜んと祐司は言った。
ジム・ボタンもいるし、モモもいる。
赤ずきんちゃんもいるし、もちろんアンネ・フランクもいるし、きっとヒトラーやルドルフ・ヘスもいる。
アリストテレスもいるし、ニュートンもいる。
みんなで何をしているの?
何って、みんな静かに暮らしているんだよ。
それだけ?
それだけって、そうだなあ、みんなで何かを考えているんじゃないかな?
考える?何を?
すごく難しいこととか。時間がかかるんだよ、答えが出るまで。だから、あっちの星ヘ行っても、ずっと考えているんだ。
ママも?
いや、ママは祐司のことを考えている。
そうなの?
そうだよ。
だから祐司も、ずっとママのことを忘れずにいるんだよ。
忘れないよ
でも、おまえは小さい。ママとはほんの5年しか一緒に暮らさなかったからね。
うん
だから、いろいろ話してあげるよ。
ママがどんな女の子だったか。
どんなふうにパパと出会って、結婚したのか。
そして祐司が生まれて、どんなに嬉しそうにしていたか。
うん
そして、ずっと覚えていてほしいんだ。
パパがあっちの星に行ったときママに会うためには、どうしてもおまえがママのことを憶えていてくれないといけないんだ。
わかるか?
うん
まあ、いいんだけどね。