お父さんにもらった優しい嘘
僕の心に響いた言葉は、「お父さんはちょっと遠いところで仕事をすることになったから、お母さんと元気に過ごしてね。」です。その時僕は二歳でした。とても小さかったので直接言われたのは覚えていませんが、言ってくれた時の動画がお母さんのスマホに今でも覚えているので、好きな時に聞くことができます。
この普通に思える言葉が僕の心に響いた理由は、実はお父さんがついた嘘だったからです。この言葉の一週間後に、お父さんは白血病で死んでしまいました。
そして、この言葉をお父さんが残したのは病気がわかって入院した日でした。お父さんは、会えない間に僕が悲しまないように、わざと嘘をつきました。嘘は普通よくないけど、これは、お父さんが僕のためについてくれたさやしい嘘だと思います。
この言葉を動画で聞くと、お父さんに会ってみたくて少し悲しい気持ちになります。でも悲しいだけじゃなくて、悲しませないように嘘をついてくれたお父さんの優しさを思って「頑張ろう!」と思えます。
お父さんが死んでしまったことは知っているけど、お父さんの嘘が本当になって、いつか夜遅くにドアの前で「ドアを開けて、帰ってきたよ。」と言っているお父さんに会いたいです。こう思えるのも、お父さんの優しい嘘のおかげです。
僕からお父さんに伝えたいことがあります。
「お父さん、嘘がばれてるよ!だって周りに病院の道具がいっぱいあるし、お父さんがよこになっているし、目から涙がちょっとだけ出ているし、声が寂しそうだから。」でも僕は、騙されているふりをし続けようと思います。
お父さんが優しい嘘をついてくれたおかげで、僕の心は強くなれています。これからもお父さんの言葉を守ってお母さんと元気に過ごしたいです。お父さん、優しい嘘をありがとう。