世の中はなかなか自分の思うようにならないというけれど、見方によっては、自分の思うようにならないほうがいいのかもしれない。
人間は神様ではないのだから、いつも一番正しい考えを持っているとは限らないわけで、ときには自己に執し、他人にとらわれる。そんなとらわれた考えを世の中に押し付けてみたところで、それで通るはずがない。
しかし世の中もなかなか寛大なところがあるから、ある程度までは受け入れてくれる。それでいい気になって調子に乗る。その辺で止めておけばいいものをと思っているうちに、案の定行き詰まる。行き詰まってみて、世の中はなかなか自分の思うようにならないと嘆く。もともと自分の考えがとらわれているのだから、嘆くほうがムリである。
もしも自分の思うようになっていたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。自分だけならいいけれど、他人にもたいへんな迷惑をかける。
世の中はいい先生である。寛大なところはあるが、最後には正邪をちゃんと弁えている。だから、馬鹿にしてはいけない。筋道の通ったことはやはり通してくれるのである。
なぜ自分の思うようにならないか、もう一度よく考えてみたいものである。