半沢直樹19
湯浅社長:大和田常務、ご無沙汰しております。
大和田常務:こちらこそ。日にちがずいぶんと空いてしまって申し訳ない。本来なら、もっと早く駆けつけて、御社の窮地を救いたいと思っておりましたが、常務ともなるとなかなか小回りが利かなくていけません。
湯浅社長:この度の件では、色々とご迷惑をおかけしております。
大和田常務:何を水臭いことを。今日は、そのことで参りました。
湯浅社長:といいますと?
大和田常務:まあ、正直、今のままでは苦しい。ナルセンがあのようなことになってしまった今、金融庁検査を乗り切ることはできません。何か打開策がおありかな?君はあるのかね。私にはある。湯浅さん、率直に申し上げる。経営体制の変更をお願いしたい。実は金融庁の黒崎主任検査官にはすでに打診をしてある。一族経営を捨てて、新しい可能性を模索するなら、分類するかどうかの判断を来期一年間、猶予してもらえることになってい
る。
湯浅社長:私に退けと。
半沢:お待ちください、常務。
大和田常務:心配には及びませんよ、社長。後任にはこのホテルのことを誰よりもよく分かっている羽根専務に就いていただく。
羽根専務:先代よりお仕えしてきた私が、このような形で後を引き継ぐのは、大変心苦しいですが、これも伊勢島ホテルの名を守るためです。ご了解いただけますよね。
半沢:伊勢島の担当は私です。私は何も聞いておりません。
大和田常務:大丈夫。それなら問題ないよ、半沢君。君には、今日付で担当を外れてもらうから。今まで、本当にご苦労さま。あとのことは安心して私にお任せください。
半沢:納得できません。私は湯浅社長の退陣には反対です。
大和田常務:だったら君は、私の提案以外にこの伊勢島ホテルを救う方法を持ってるのかね。口だけじゃ、伊勢島も、うちの銀行も潰れてしまうよ。
半沢:もう少しだけ時間をください。必ず私が責任を持って伊勢島ホテルを再建する方法を見つけます。湯浅社長は誰よりも伊勢島ホテルの再建に尽力され、自ら一族経営の悪習を断ち切ろうと努力されています。私は、銀行員として、湯浅社長こそこれからの伊勢島ホテルに必要な方だと、そう確信しております。