挪威的森林(12)

挪威的森林(12)

2019-01-15    03'22''

主播: 丹青猫

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介绍:
僕の頭は痛みはじめた。もうどうでもいいやという気もしたが、まあ言いだしたことははっき りさせておこうと思って、僕は実際に NHK ラジオ体操第一のメロディーを唄いながら床の上でぴ ょんぴょん跳んだ。 「ほら、これだよ、ちゃんとあるだろう?」 「そ、そうだな。たしかにあるな。気がつ、つかなかった」 「だからさ」と僕はベッドの上に腰を下ろして言った。「そこの部分だけを端折ってほしいんだ よ。他のところは全部我慢するから。跳躍のところだけをやめて僕をぐっすり眠らせてくれない かな」 「駄目だよ」と彼は実にあっさりと言った。「ひとつだけ抜かすってわけにはいかないんだよ。 十年も毎日毎日やってるからさ、やり始めると、む、無意識に全部やっちゃうんだ。ひとつ抜か すとさ、み、み、みんな出来なくなっちゃう」 僕はそれ以上何も言えなかった。いったい何が言えるだろう?いちばん手っ取り早いのはその いまいましいラジオを彼のいないあいだに窓から放りだしてしまうことだったが、そんなことを したら地獄のふたをあけたような騒ぎがもちあがるのは目に見えていた。突撃隊は自分のもち物 を極端に大事にする男だったからだ。僕が言葉を失って空しくベッドに腰かけていると彼はにこ にこしながら僕を慰めてくれた。 「ワ、ワタナベ君もさ、一緒に起きて体操するといいのにさ」と彼は言って、それから朝食を 食べに行ってしまった。