あなたは夜のページを開く
細く 白い指先に
薄ら火が灯っていた
ゆっくりと愛しそうな角度で
あなたは夜を開いていく
僕はその物語の中で
泣いたり 笑ったりしていたい
名前が作前の感情だけを頼りに
探り 探り
粗筋をたぐって行きたい
あなたがひらいた夜を思う
絵描かれた未来と過去を思う
そして
そのどこにもいなかった誰か思う
この今にお邪魔できないまま
登場人物の背中をぼんやりみつめている
僕のこと
なんにも書かれていない
真っ白なページは
僕の寂しさとどこが似ている
じっくり読むほどのものじゃないけど
話を始めようか
あなたの指先が触れるのを待っている
僕が開いた
夜のこと