日銀が追加金融緩和に動いた。長期国債と短期国債を5兆円ずつ買い増す。日本経済の下振れを避けるため、より強力な措置を講じるのは評価できる。その効果を十分に引き出し、景気の下支えと円高の是正につなげるべきだ。
日銀は国債を含む資産買い入れの基金を、70兆円から80兆円に拡大することを決めた。購入の期限も2013年6月末から半年間延長する。長期金利などの一段の低下を促す狙いがある。
足元の日本経済は停滞色が濃くなってきた。海外経済の減速やエコカー補助金の息切れなどが重なり、輸出と生産が振るわないのが主因だ。今春から景気後退局面に入ったとの見方も出ている。
日銀も景気判断を下方修正し「持ち直しの動きが一服している」と認めた。景気の失速や円高の進行を食い止め、デフレからの脱却を後押しするために、金融緩和の強化に動くのは妥当である。
中国で過熱する反日デモの影響もあって、景気の先行きは楽観できない。日銀が目指す前年比1%の消費者物価上昇率を達成するには時間がかかりそうだ。米欧が大規模な金融緩和に踏み切り、円高が進みやすい市場環境も続く。
超低金利の日本では金融緩和の効果にも限界がある。膨らむマネーの副作用にも注意した方がいい。それでも今は地道な努力を積み重ねるしかない。景気の悪化や円高が加速する場合には、さらなる対応もためらうべきではない。
政府も9月の月例経済報告で「回復の動きに足踏みがみられる」との景気判断を示した。2カ月連続の下方修正である。こうした現状認識も踏まえ、12年度補正予算案の編成を急ぐ方針だ。
衆院解散・総選挙をにらむ与野党には、公共事業の拡大を求める声が強い。14年度からの消費増税への不満を和らげる意味もある。だが効果の乏しい旧来型の事業をむやみに増やすのでは困る。
財政再建と経済成長の両立という日本の課題を忘れてはならない。国の財政規律を保てぬまま、日銀が安易に長期国債の購入を増やせば、市場が「財政赤字の尻ぬぐい」と受け止める恐れもある。
ここは効果的な政策対応の選別が必要だ。金融緩和の浸透で景気を下支えしつつ、成長力の強化に役立つ予算措置や税制改正、規制緩和に取り組み、消費増税の実現につなぐ。そんな政府・日銀のポリシーミックスを求めたい。