夜明けは近いと思われた。淳也は白紙の便箋を見つめていた。
天快亮了。敦也注视着空白的信纸。
「なあ、そんなことって本当にあるのかな」
「真的会有这种事吗?」
「そんなことって、何さ」翔太が訊く。
「哪种事?」翔太问。
だからさ、と淳也はいった。「この家が過去と現在で繋がってて、過去の 手紙が俺たちのところに届いて、逆にこっちが牛乳箱に入れた手紙が向こうに届くってことがだ」
「就是这栋房子把过去和现在连在一起,我们可以收到过去的信,我们放在牛奶箱里的信也可以送到过去。」敦也说。
「今さら何いってんだよ」翔太は眉間に皺を寄せた。
「実際そうなってるから、俺たちは手紙のやりとりをしたんじゃないか」、
「事到如今,问这种事也没用,」翔太皱着眉头,
「事实就是这样,我们不是和过去的人书信往来了半天吗?」
「それはまあ、わかってるけどさあ」
「我知道了。」
「確かに不思議だよな」そういったのは幸平だ。「『ナミヤ雑貨店 一夜限りの復活』が関係しているんだろうけど」
「的确很奇怪,」开口的是幸平,「八成和『浪矢杂货店只限一晚的复活』有关。」
よし、といって淳也は白紙の便箋を手にしたままで腰を上げた。
「好!」敦也说着,拿着空白的信纸站了起来。
「どこに行くの」翔太が訊いた。
「你要去哪里?」翔太问。
「確認だ。試してみよう」
「我去确认。来试一下。」
淳也は裏口から外に出て、ドアをきっちりと閉めた。それから路地を通って表に回り、シャッターの郵便口から折り畳んだ便箋を投入した。再び裏口から屋内に入り、シャッターの内側を見た。そこに置かれた段ボール箱に、外から入れたはずの便箋はなかった。
敦也从后门走了出去,用力把门关上。他沿着防火巷绕到前门,把折起的信纸投进了铁卷门上的投递口。然后,再从后门走进屋内,看着铁卷门内侧,但是,放在铁卷门下的纸箱内并没有他刚才投入的信纸。
「やっぱり、思った通りだったね」翔太が自信に満ちた口調で言った。「今この店の外からシャッターに手紙を放り込んだら、たぶん三十二年前に届くんだよ。それが一夜限りの復活の意味だ。これまで俺たちは、その裏側の現象を体験してきたってわけだ」
「我果然没有说错,」翔太充满自信地说,「现在从外面把信投进铁卷门内,就会送到三十二年前。这就是只限一晚复活的意义。刚才,我们经历了相反的现象。」
「こっちが夜明けになるとき、三十二年前の世界では……」
「当这里天亮时,在三十二年前的世界……」
淳也の言葉の後を翔太は継いだ。「爺さんが死ぬんだと思う。『ナミヤ雑貨店』の店主だった爺さんが」
敦也还没说完,翔太就接着说:「那个老头死了,就是浪矢杂货店老板的那个老头。」
「やっぱりそう考えるしかないか」淳也は、ふうーっと長い息を吐いた。不思議な話ではあるが、ほかに説明がつかなかった。
「这是唯一的可能。」敦也重重地吐了一口气。虽然听起来很奇妙,但这是唯一合理的解释。
「あの子、どうなったかな」幸平がぽつりと呟いた。淳也と翔太が揃って顔を見ると、彼は顎を引き、「『迷える子犬』ちゃんだよ」といった。
「俺たちの手紙、何かの役に立ったのかな」
「不知道那个女人怎么样了,」幸平幽幽地说。敦也和翔太一起看着他的脸,他缩起下巴说,「就是那个『迷茫的汪汪』啊,不知道我们的信有没有帮到她的忙。」
さあねえ、と淳也はいうしかなかった。「まあ、ふつうだったら信じないだろうな」
「谁知道啊,」敦也只能这么说,「正常人应该不会相信吧。」
「 どう考えても胡散臭いもんなあ」翔太は頭を掻く。
「听起来就觉得很可疑。」翔太抓着头。
『迷える子犬』からの三通目の手紙を読み、淳也たちは焦った。どうやら彼女は怪しげな男に騙され、利用されかけているようだった。しかも彼女は、『丸光園』の出身者だという。これは何とかして救わなければならない、いやそれだけでなく、彼女を成功へと導いてやらねばならないと三人で話し合った。
看了「迷茫的汪汪」第三封信后,敦也他们慌了手脚。因为她似乎被坏男人欺骗、利用了,而且,她曾经住过丸光园。于是,三个人讨论后决定,无论如何都要拯救她,不,必须让她获得成功。
そこで出した結論は、ある程度の未来を教えてやろう、というものだった。一九八○年代後半にバブル景気といわれる時代があったことは三人も知っていた。そこで、どううまく立ち回ればいいのかをアドバイスすることにしたのだ。
他们决定在某种程度上告诉她未来的事。三个人都知道,一九八○年代后期,是被称为泡沫经济的时代,所以,他们向她提供了建议,教她该怎么做。