【文本】
拝啓 有馬公生様
さっきまで一緒にいた人に手紙を書くのは、変な感じです。
君はひどいヤツです。
グズ、のろま、あんぽんたん。
君を初めて見たのは、五つの時、当時通ってたピアノ教室の発表会でした。
ぎこちなく登場したその子は、
椅子にお尻をぶつけ、
笑いを誘い、
大きすぎるピアノに向かい、
一音を奏でたとたん、
私の憧れになりました。
音は24色パレットのようにカラフルで、メロディーは踊り出す。
隣の子が泣き出したのはびっくりしました。
それなのに キミはピアノをやめるんだもの。
人の人生を左右しといて ひどいヤツです。
さいてい、のろま、あんぽんたん。