最高の離婚
あなたをこっそり見るのが好きでした。あなたは照れ屋で、なかなかこっち向かないから、盗み(ぬすみ)見るチャンスはたびたびあったのです。目黒川(めぐろがわ)を2人で並んで歩くとき、こっそり見てました。DVD見てるとき、本読んでるとき、いつもあなたを盗み見て、気持ちは自然と弾み(はずみ)ました。
桜が見える家にお嫁(よめ)に来て、桜が嫌い人と一緒に暮らして、だけど、あなたが思うよりずっと、私はあなたに甘えていたし。包容力っていうのは、少し違うけど、あなたの膝(ひざ)でくつろぐ心地よさ(ここちよさ)を感じていました。一日日向(ひなた)にいるような、そんなまるで猫のように。もしかしたら私は、この家に住む3匹目の猫のようなものだったのかもしれません。
おいしいご飯ありがとう。暖かいベッドありがとう。膝の上で頭をなでてくれてありがとう。あなたを見上げたり、見下ろしたり、まじまじ見たり、そんなことが何より掛け替えのない幸せでした。
光生さん、ありがとう。お別れするのは自分で決めたことだけど、少し淋しい気もします。でももし、またあなたをこっそり見たくなった時は、あなたにちょっと話しかけたくなった時は、また、どこかで。