第八回
お持ち帰りできます
お持ち帰りになれます
「当店のピザ、お持ち帰りできます」
このような表示を見かけるのは、ごく普通になりました。しかし、これも前項と同様、基本的に誤った敬語法になっていることに、気づかなければなりません。「お~できる」という形は、「お~する」という謙譲表現の可能形。つまり、「お持ち帰りできます」は“お~する症候群”の一種なのです。これでは、持ち帰りをする客に、へりくだりをさせていることになってしまいます。「私がお話できるのはここまでです」「あなたには、これ以上ご協力できません」「今日中にお届けできます」表題の掲示は、次のように正さなければなりません。「お~にする」の可能形「お~なれる」という形を用いれば、尊敬表現となるのです。どうしても「お」とできるとを組み合わせたいのであれば、次のように表せばよいでしょう。「当店のピザ、お持ち帰りをご用意できます」
しかし、わざわざややこしい言い方をする必要はないでしょう。「お持ち帰りも承ります」という表示でも良いと思います。
類似の誤用としては——、「ごおうぼできます」「ごりようできます」「ご入場できます」「ご乗車できます」「ごかにゅうできます」など。目に余る間違い敬語がはんらんしています。
×お持ち帰りできます
○お持ち帰りなれます
○お持ち帰りも承ります