第九回
(課長に向かって、部長に対し)
見せてやってください
お見せください
課員から課長への言葉。「(部長に)見せてやってください」の場合、「ください」は良いのですが、その前の「見せてやって」がよくありません。課長に対しては敬意がありますが、部長に対して敬意が払われていないことになるからです。下位者が上位者に対する敬語の中で、さらに上位者が登場する第三者敬語は特に難しいもの。
“第三者敬語”とは、“客体敬語”ともいい、話題の中の登場人物に敬意を表す用法をいいます。このケースでは、話者が本人、対者が課長、部長が第三者ということになります。
この場合は「お見せください」「お見せになってください」で良いでしょう。自信がもてないときは、余計な「やって」は省いて「見せてください」でも、敬意は不足しますが、誤りではありません。「見せてあげて」では、今度は課長に対して誤った謙譲語になるので注意しましょう。
「お見せしてください」では、課長の動作をあらわすのが、「お~する」という謙譲表現の形になってしまっています。謙譲語も敬語には違いありませんが、使い方で効果は逆になるのです。
×見せてやってください
×見せてあげてください
×お見せしてください
○お見せください
○お見せになってください