女芸人の苦悩
今日も私たちは、一瞬の笑いに命を掛ける。
「イタタタタタ……! 何すんだよ、バカヤロウ!」
鼻フックを掛けられて、涙目になりながら、私は罵声を浴びせる。
逆に、お客さんは笑ってくれている。どんなに辛い仕事でも、私にとっては、それが一番の幸せ。
仕事が終わって、私たちは飲み屋に出かける。
「さっきの鼻フックだけどさ、遠慮しすぎだよ。もっと鼻の穴全開にしてくんないとさ、お客さん、もっと笑い取れたはずだよ」
飲み会に乗じた反省会の始まり。
「ええ? 結構引っ張ったけどなあ」
「ダメダメ、あんなの。ストッキング被りもさあ、今日のストッキング、あんまりいいやつじゃなかったよね」
「そうそう、伸びすぎてびっくり! あれじゃあ、すげー遠くまで行かないと、顔引っ張られないじゃんね。思わず手で引っ張っちゃったわよ」
「あはは。私も」
私たちは、大きな口を開けて笑う。
「ああ、でも。男欲しい~!」
反省会が終われば、恋愛話に花が咲く。