夏目漱石没後100年&生誕150年記念!明治も現代も、猫の目から見た人の世はいつだって不可思議なものです。猫好きの作家8名が漱石の「猫」に挑む!読めば愛らしい魅力があふれ出す、究極の猫アンソロジー!
主播:中村纪子
作品:村山由佳『猫の神さま』(『吾輩も猫である』より)
BGM:吉森信 - 奇妙な現実
以下为部分节目原稿,查看全文请移步【公衆号:中村Radio】
中村日语课程咨询【官方号:nakamurajapanese】
「猫の神さま」(3)
その年の冬ーー<あたしのヒト>に、ふたたび恋の季節が訪れた。
当の本人が気づくよりも前から、そばにいるあたしにははっきりわかった。わからないほうがどうかしている。何しろ彼女ときたら、薄べったくて四角い金属の板が<ピルルル!>と小鳥に似た声で鳴くたびに、獲物に飛びかかるような勢いで走っていっては眦を決してそれに目入るのだ。どうやら特定の誰かからのメッセージが届くのを期待しているらしく、それが単なる仕事関係のものだったりすると、あからさまに肩が落ちるのだった。
どうして、つがいの相手なしでは満足できないんだろう。
そう思うと、ひどく寂しかった。あたしは彼女だけいれば充分なのに、彼女はそうじゃない。あたしだけでは充分じゃないのだ。
「もう十何年も会ってなかった昔の恋人なんだけどね」
彼女はこっそりあたしに告白してよこした。
「わかんないの。どうして私、一度は別れた彼のことがこんなに気にかかっちゃうんだろう。向こうも、どうして今になって私なんかにかまうんだろう」
猫は、ほんとうの気持ちを我慢しない。いくらお腹が空いていたって気にくわない相手にすり寄ったりしないし、撫でられたくない時に背中を撫でまわされるのを許したりもしない。そんなことをくり返していたら、いちばん大事な自由を明け渡さなくちゃならなくなる。
だから、あたしも正直になることにした。
……
(查看全部原文请移步【公衆号:中村Radio】)