見上げれば薄水色の空。雲ひとつない。とても静かで平穏な一日の始まり。私、本当にパリにいるんだよね。まだ半分寝ぼけている。
今夜はメグミさんと食事の約束をしている。夜7時にオペラ座の前で待ち合わせ。メグミさんというのは昨日私がパリ. シャルル .ド . ゴール空港に降り立つや否やさっそく迷子になっているときに偶然出会った(助けられた、かな?)、日本人の女の子。彼女もひとり旅で、今回が初めてのパリなのだという。
「北海道のケーキ屋で働いていたんですけど。そこを辞めて東京のお店に転職することになって。その隙間に、思い切って来ちゃったんです。本場でお菓子をいろいろ食べてみたいと思って。」
「へえ!パティシェさんですか?素敵~」
「そちらは?」
「私は、実は5週間の旅に出たところで……」
「えっ、5週間?」
「パリだけじゃなくて、色々ヨーロッパを巡ろうと思っていて」
「ひとりで?すごーい!」
ひとりぼっちの心細さを紛らわすのようにお互い饒舌(じょうぜつ)だった。小柄でリスみたいにクスクスと笑うかわいらしい人。どちらからともなく滞在中に一緒にご飯でも食べましょうかという話になり、連絡先を交換。初日からいきなり誰かと夕食を共にすることになるとは。
たかがホテルまでの道のりが、昨日は大冒険だった。