海角七号的旁白信
強風が吹いて、台湾と日本の間の海に、僕を沈めてくれればいいのに。
そうすれば、臆病な自分を持て余さずに済むのに。
友子、立田数日の航海で、ぼくはすっかり老け込んでしまった。
潮風が連れてくる泣き声を聞いて、甲板(かんぱん)から離れたくない、寝たくもない。
僕の心は決まった、陸に着いたら、一生海を見ないでおこう。
潮風よ、なぜ、泣き声を連れてやってくる。
人を愛して泣く、嫁いでいく泣く、子供を産んで泣く。
君の幸せな未来図を想像して、涙が出そうになる。
でも、僕の涙は潮風に吹かれて溢れる前に乾いてしまう。
涙を出さずに泣いて、ぼくはまた老け込んだ。
憎らしい風、憎らしい月の光、憎らしい海。
12月の海はどこか怒っている、恥辱(ちじょく)と悔恨(かいこん)に耐え、
騒がしい揺れを伴いながら
僕が向かっているのは、故郷なのか
それとも、故郷を後にしているのか?