《罠の中》(三) [東野圭吾]

《罠の中》(三) [東野圭吾]

2016-04-23    04'51''

主播: 大黒

343 32

介绍:
《罠の中》(三) 原文 「ふうむ」 色白の男は煙草を吸い、乳白色の煙をたっぷりと吐き出した。そして眉を寄せ、二、三度に首を動かす。「だめだな、やっぱり。眠らせるには睡眠薬を使わなきゃいけないが、そんなものは簡単に検出されてしまう。それに眠ったからといって、必ずしも溺死するとは限らない。むしろ、しない確率のほうが高い」 「なんだ、これもだめか」 年少の男が溜息をついた。 「いやしかし、風呂で死ぬというのはいいな」 色白の男が意味あり気な言い方をしたので、他の二人は彼の顔に注目した。 彼は続けた。 「風呂というのは、ひとりっきりになれる数少ない場所だ。他ではできないことでも、風呂なら可能だということもある。たとえば、わざとガスを漏らせて、風呂場だけを爆発させる。入浴中の人間ならひとたまりもない」 「だめだそんなのは」 年長者があわてたようすで言った。「火を使うのはいかん。万一のことがある」 「ほんの一例だよ。ほかにも手はある」 「たとえば?」 「たとえば――」 色白の男は一段と声を落として、自分の考えをしゃべり始めた。