【私は不思議でたまらない】
「私は不思議でたまらない、誰にきいても笑ってて、あたりまえだと、いうことが。」
この世界にあふれるすべてのものに、やさしいまなざしを向けた金子みすづ。彼女の目には、何もかもが、とっても不思議で、いとおしいものに映っていたのでしょう。黒い雲から銀色の雨が降ることも、青い葉を食べる蚕が白いことも、夕顔がひとりでに咲くことも……。
それを「あたりまえ」という言葉で受けとめている人々も、この詩では微笑ましく描かれています。
それにしても、私たちは、何でも簡単に「あたりまえ」と思ってしまいがちです。考えてみれば、この世に「あたりまえ」と言い切れることが、はたしてあるのでしょうか。
私たちが生まれてきたことも、生きていることも、本当はあたりまえのことではないのです。それは、たくさんの奇跡の積み重ね。彼女が言うように、命とは、自然とは、なんと不思議なものでしょう。
「あたりまえ」と決めつけてしまう心からは、感謝の気持ちは生まれません。大切にしたいという心も湧きません。“みんなちがって みんないい”というそのやさしさも、あふれてこないでしょう。
彼女の詩を読むと、忘れがちなまなざしを取り戻せるような気がします。そして、たくさんの不思議に感謝したくなってきます。