ぽぽの随筆<88> 温泉(3)
原创 2017-05-25 ぽぽ 直通霓虹
こんにちは。
温泉は私にとって馴染(なじ)みがあるなんてものではなく、まさに生活の一部分でした。日本でお風呂、入浴(にゅうよく)といえばシャワーなどでただ身体をきれいにするだけではなく、一般的には湯船(ゆぶね)のお湯に浸かることまでを含んでいると思います。そして私が小さい頃は、お風呂に入るといえばそれはとりもなおさず温泉に入ることでした。
山が海まで迫った、谷(たに)あいに赤い瓦屋根(かわらやね)がひしめき合(あ)う小さな港町(みなとまち)で温泉町、それが私の故郷です。温泉は1300年ほど前、旅の僧(そう)が湯に浸かって傷(きず)を治している狸(たぬき)を見つけたことが始まりと伝えられています。明治5年(1872年)には地震で別の源泉(げんせん)が湧出(ゆうしゅつ)を始め、なんとのその泉質(せんしつ)はオール5の評価(ひょうか)(日本で19カ所だけ)の最高級天然温泉なのです。
でも交通の便(べん)の悪い辺鄙(へんぴ)な町の温泉は、観光客も多くなく、専(もっぱ)ら地元(じもと)の人たちの“お風呂”として愛されてきました。お風呂のお湯は少し黄色で少し苦(にが)くて少ししょっぱくて、少し鉄臭(てつくさ)いにおいがして熱く、湯船にも床(ゆか)にも湯(ゆ)の花(はな)が付いています。温泉という意識もないまま毎日汚(よご)れを落とし疲れを癒し、今考えるとなんと贅沢(ぜいたく)なことだったでしょう。
実家を離れ日本を離れ、温泉から離れた生活が長くなると、温泉が無性(むしょう)に恋しくなります。疲れた時には特に。温泉とは、特別であって特別でない、特別でなくて特別なもの、私にはそう感じられます。今回山の中の温泉に入って、またそんな“特別さ”を感じました。
温泉(3) 終わり
馴染(なじ)み 熟识的
湯船(ゆぶね) 浴缸
とりもなおさず 就是,即是,换句话说
谷(たに)あい 山谷,山沟
瓦屋根(かわらやね) 瓦房顶
ひしめき合(あ)う 挤,拥挤
港町(みなとまち) 港口城镇
狸(たぬき) 貉,貉子狸
辺鄙(へんぴ) 偏僻
専(もっぱ)ら 主要,专门
地元(じもと) 当地,本地
湯(ゆ)(1)の花(はな) 泉华,温泉沉淀物
贅沢(ぜいたく) 奢侈,浪费
無性(むしょう)に 不分情由地,非常