その時です、私は…走り出したのです、後悔を天国に持ち込まないため、好き勝手やったりしました、怖かったコンタクトレンズ、体重を気にしてできなかったケーキボール食い、偉そうに指図する譜面も私らしく弾いてあげた、そして…一つだけ嘘をつきました、宮園かをりが、渡亮太君を好き、と言う嘘をつきました、その嘘は、私の前に、有馬公生君…君を連れて来てくれました、渡君に謝っておいて、まーでも、渡君ならすぐ私のことなんか忘れちゃうかな、友達としては面白いけど、やっぱり私は一途な人がいいな、あと…椿ちゃんにも謝っといてください、私は通り過ぎていなくなるにん間、変な禍根を残したくなかったので、椿ちゃんにはお願いできませんでした、というか、有馬君を紹介してなんてストレートに頼んでも、椿ちゃんはいい返事をくれなかったと思うな、だって椿ちゃんは、君のこと大好きだったから、みんなとっくに知ってるんだから、知らなかったのは君と…椿ちゃんだけ、私の姑息な嘘が連れてきた君は、想像と違ってました、思ってたより暗くて卑屈て、意固地でしつこくてとうさつま、思ってたより声が低くて、思ってたより男らしい、思ってた通り…優しい人でした、土稜橋から飛び込んだ川は冷たくて気持ちよかったね、音楽室をのぞくまんまるの月は、お饅頭みたいで美味しそうだった、競争した電車には本気で勝てると思った、輝く星の下で、二人で歌ったキラキラ星、楽しかったね、夜の学校って絶対何かあるよね、雪って、桜の花びらに似てるよね、演奏家なのに舞台の外のことで心がいっぱいなのは、なんかおかしいね、忘れられない風景がこんな些細なことなんて、おかしいよね、君はどうですか、私は誰かの心に住めたかな?私は君の心に住めたかな?ちょっとでも…私のこと思い出してくれるかな?ルセットなんかいやだよ、忘れないでね、約束したからね、やっぱり、君で良かった、届くかな、届くといいな、有馬公生君…君が好きです、好きです、好きです、カヌレ全部食べれなくてごめんね、たくさんたたいてごめんね、わがままばかりでごめんね、いっぱいいっぱいごめんね、ありがとう。