白沢:ようこそおいでくださいました。蟲師のギンコさんでしたね。
ギンコ:ええ。
白沢:村長の白沢でございます。村を代表してお呼びいたしました。ここはご覧のとおり深い山の底。風の通らぬ静かな里でございます。特にこのような雪の晩には、物音ひとつしなくなり、話し声すら消えてしまうこともあると言います。そしてそういう時、耳をやんでしまう者が出るのです。
ぎんこ:それを両耳ですか?
白沢:ほとんどの者が片耳です。麓の町のお医者方は首を捻るばかりで、もしや異形の影響やもしれぬと思い立ったのです。
ギンコ:なるほど、この粘液!原因は蟲ですな。うんと言います。これが音を食ってるんです。普通、森の中に生息する蟲ですが、雪は音を吸収する。だから音を求めて里へ降りて来たんでしょう。...ああ、ここにいましたね。かなり大きな群れが巣くってますね。これじゃ、音を食い尽くしてしまうわけだ。そうなると、群れを離れて、獣に寄生をしはじめる。
男:一見カタツムリのようだ
ギンコ:移動したんですな。耳の中にカタツムリそっくりな器官があるのをご存知ですか?飢えた うん は自らの殻を捨て、そこに寄生し、入ってくる音をすべて食ってしまうんです。ですが、器官が壊された訳ではありません。
女:あの、お湯って、これぐらいで?
ギンコ:どうも...これを耳に流し込めば、。。。これ、このとおり!
男 :から!なんだ、これ!
ギンコ:塩ですよ。
男 :塩?あ〜聞こえるぞ。
ギンコ:後はそれを屋根裏中に吹き付けておけば問題ないでしょう。