《庭》にわ
過去が咲く庭には
干上がってしまった池に沈む(干上がる ひあがる)
紅葉(こうよう)が似合っておりました
勿論(もちろん) それは若葉(わかば)の季節で
きみなど歩き回るのに
すっかり慣れて
足跡(あしあと)がそのまま
化石(かせき)になってしまうことに
まるで気づいていないのでした
太陽は垂直(すいちょく)に
昇(のぼ)って行きます
きみの影は
どんどん短くなり
最後に足もとに
すっかり隠れてしまった時
きみを呑み込んだ過去の庭は
また午睡(ごすい)を始めるのでしょう
“きみ 早く帰っておいで”
《イニシャル》首字母
少しだけでも静かな時間が欲しいと
本当のところをきみはとうとう言わなかった
そしてぼくが言ってしまった
あれからまだぼくは空っぽでいるよ
何も答えが無いからね
置き忘れていった本の扉(とびら)の
きみのイニシャル消した